金魚の病気の治療・体調不良に多く利用されている『塩浴』。
塩浴は昔からおこなわれており、
金魚の病気の治療や体力回復のための基本的な方法で、かつ、有効的な方法です。
塩浴について、「塩浴はなぜ良いのか?」「正しい塩浴の方法」「塩浴のメリット・デメリット」を解説します。
●塩浴はなぜ良いのか?
では、なぜ塩浴は良いのでしょう?
それは、
浸透圧(しんとうあつ)がかかわってきます。
むむむ…難しい言葉が出てきましたが、簡単に説明すると、
例えば、
キュウリの塩もみ
キュウリを塩でもむことで、キュウリの水分を外に出すのが目的ですが、これも浸透圧を利用しています。
例えば、
ナメクジに塩をかける
ナメクジに塩をかけることで、ナメクジの水分が外に出て、ナメクジはしぼんでしまいますが、これも浸透圧を利用していますです。
つまり、
塩分濃度の高い方から低い方へ水分が移動するという感じでしょうか。
金魚の塩分濃度は0.6%前後、対して、飼育水の塩分濃度は0%。
この状況を、人間でたとえると、
人間の塩分濃度は0.85%前後、対して、プールの塩分濃度は0%。
プールで目を開けると、目が痛くなりませんか?
これは、塩分濃度の低いプールの水が、塩分濃度の高い目に入ってきて、目が膨張しているため、目が痛くなっているのです。
でも、目薬は痛くなりません。(スーっとして痛みを伴うタイプの目薬もありますが、あれはスーっとさせるのが目的なので)
なぜかというと、
目薬の塩分濃度は人間の塩分濃度に合わせてあるためです。
金魚の塩浴は、目薬が痛くないというのと同じような目的です。
通常、金魚の方が塩分濃度が高く、飼育水の方が塩分濃度が低いので、飼育水が金魚の体内に入ろうとしてきます。
健康な状態の金魚の場合、体の表面に粘膜を出すことによって、これをある程度防いでいます。
すべて防げるわけでは無く、体に入ってきた水分は、おしっことして常時垂れ流しています。
つまり、常に
粘膜を作る・余分な水分を排出することに
体力を使っている状態となります。
が、体調を崩したり、病気になったりすると、粘膜を作る力がそこなわれたり、粘膜を作ること・余分な水分を排出するに力を割くのがしんどくなります。
塩浴にて飼育水の塩分濃度を金魚の塩分濃度に近づけてやると、飼育水が金魚の体内に入ってこようとする力が少なくなります。
そうすると、金魚は粘膜を作ること・余分な水分を排出することに力を割く必要が少なくなり、
『楽な状態』になります。
人間で考えると、病気になったときに、良い環境(空気も良く、温度もちょうど良い)で療養するのと、悪い環境(空気がよどんでいて、温度もとても暑いか寒い)状態で療養するのとでは、良い環境で療養する方が治りが早いですよね?それと同じ感じだと思ってください。(少し違いますが(笑))
つまり、塩浴は病気を治療しているのではなく、
金魚を楽な状態にしてあげることによって、
体調が回復しやすく、体調が回復することにより金魚自身の力で病気を乗り越えることが出来るということになります。
こう考えると、
塩浴はすべての病気に対応可能だが、かならず治るわけでは無いというのも納得できると思います。
これが、塩浴の仕組みです。
●塩浴が良いなら、常時塩浴状態で飼育してはダメなの?
塩浴状態が楽なら、体調が悪くないときも、
ずっと塩浴状態で飼育すれば良いのでは?と思う人も多いと思います。
結論から言うと、塩浴状態での飼育は可能ですし、実際にされている方もいます。
ただし、デメリットも存在します。
・体を覆う粘膜が薄くなる。
浸透圧の調整の必要性が少なくなるため、体を覆う粘膜が薄くなります。
粘膜が薄くなると、寄生虫などが金魚の体内に入りやすくなります
※塩浴程度の塩分濃度では、寄生虫・細菌などは殺せません。
寄生虫・細菌を殺そうとすると、塩分濃度が5%以上必要となりますが、金魚はこの濃度には耐えられません。
・病気になったときに回復力を上げる手段が無くなる
常時塩浴状態でも、病気になることはあります。
その場合、常時塩浴により常に楽な状態に適応してしまっているため、病気になったときに回復力を上げることが出来なくなる。
などが上げられます。
それでも、体の弱い金魚・体力の衰えた老魚・病気後の体力回復待ち状態、などの場合は、常時塩浴状態も有りだと思います。
●正しい塩浴の方法
飼育水槽とは別に塩浴用にバケツなどを用意します。
飼育水槽で塩浴をしない理由は、塩浴により飼育水槽内のバクテリアが死滅してしまうためです。
バケツに
カルキ抜きした水道水を入れます。
水の量は多ければ多いほどよいです。
(水温変化が緩やかになる、水質悪化が遅くなる、ため)
塩浴は基本的に0.5%の塩水を作ります。
※0.5%の塩の量は、こちらで計算できます。→
「塩浴時の塩の量:自動計算」
ただし、
いきなり0.5%の塩を全部入れないでください!
金魚は環境変化に弱いため、急激な塩分濃度の変化がおこると、それだけで体力を奪われてしまいます。
ただでさえ、体調の悪いときなのに、さらに体力を奪われては本末転倒です。
塩を入れる際は、数時間かけて少しずつ濃度を上げていってあげてください。
金魚をバケツに入れる際も、水合わせ・温度合わせをしっかりとおこなって上げてください。
塩浴の際は、エサは与えない方が良いです。
理由としては、
・金魚は消化器官が未熟なため、体調不良の時にエサを食べると消化不良を起こしやすい。
・塩浴時はバクテリアが以内状態なので、水質が悪化しやすい。
などがあげられます。
エサをあげる場合は、塩浴後3日間はエサはあげず、4日目以降はかなり控えめに上げてください。
※金魚は1~2週間食べなくても大丈夫です。
塩浴の期間は、最低3日~1週間ほどは様子を見ます。
塩浴中はバクテリアが居ないため、水質が悪化しやすい状態となります。
最初の3日間ほどは毎日水替え、その後は2~3日毎に水替えをおこなってあげてください。
塩浴中は、金魚の様子をしっかり観察してあげてください。
塩浴後、水槽に戻す場合も、しっかり水合わせ・温度合わせをしてあげてください。
水槽に戻した後、1日間はエサは与えないようにしてください。
●塩浴のメリット・デメリット
塩浴のメリット
・金魚が楽な状態になり、体力を回復しやすい状態となる。
・体調不良やどのような病気にもある程度の効果が期待できる。
・白点病・白雲病などの円分に弱い繊毛虫にも有効。
・軽度なエラ病の場合、治療効果が高い。
・薬と併用することにより、治療効果を高めることが出来る。
塩浴のデメリット
・金魚の回復力を高めるだけなので、病気を乗り越えられない場合もある。
・塩の濃度が濃すぎると、金魚は耐えられない。